結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「もちろん。絶対に好きになりませんよ」
「良かった。僕は僕を好きにならない女性と結婚したいんです」

思わず眉間に皺が寄る。やっぱり先生って変な人だ。

「普通は好きな人と結婚するんじゃないんですか?」
「僕は感情に振り回されない結婚がしたいんです。ですから九条さんが僕にとっては理想的な相手なんです」
「つまり、先生は私の事も絶対に好きにならないって事ですね」
「当然です」

そうだよね。私なんか眼中にないって事だよね。別にそんな事わかっていた。わかっていたのに、胸が痛くなる。

「そうですか。それはありがとうございます」
「九条さん、僕はあなたに指一本触れませんから安心して下さい。僕たちが結婚するのは自分の身を守る為です」

確かに今、私は誰かと結婚して身を守る必要がある。でも、だからって先生と結婚というのは気が引ける。

「九条さん、話が違うじゃないですか」

後ろの席から怒ったような男の声がしてドキッとした。
私に言われたのかと思ったけど、違うようだった。

ちらっと後ろを見ると、ホテルで会った中年男がいた。確か藤堂という名だった。そして、男と一緒にいるのは父! なんでいるの!
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