結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました

突然の転勤

月曜日。いつも通り午前8時半に出勤する。

三友(みつとも)銀行に新卒で入行して5年目になる。三友銀行は全国的に支店を展開する都市銀行だ。
現在配属されている緑ヶ丘支店に来て二年になる。私のような一般職でも二、三年ごとにうちの銀行は支店が変わるようになっている。それは一つの支店に長くいる事で特定の銀行員の力が強くなりすぎるのを防ぐのと、特定の企業やお客様と行員の関係が深くなる事を防ぐ為らしい。銀行員はお金を貸す仕事をしているので、公平さを保たなければならない。そんな訳で転勤が多い。私もそろそろ次の支店に異動になりそうと思っていた所、支店長から呼び出された。

「えっ、ベリが丘タウンにあるベリが丘支店に異動ですか？」
「急で悪いんだけど、来月から頼むよ」

支店長は軽く言ってくれる。ちょっと待ってよ。異動まであと二週間ちょっとしかないじゃない。今、担当している仕事は誰に引き継げばいいの？　それに今、住んでいるマンションからベリが丘タウンまで出るのに二時間もかかる。毎日、往復四時間、移動に使うのは無駄だ。引っ越し先も探さなきゃ。銀行の独身寮が空いているといいけど……。

ベリが丘タウンの家賃相場っていくらだろう？　銀行から家賃補助が出るけど、出来れば今の所と同じぐらいの家賃がいい。まさか県外の遠い支店に転勤になるとは思ってもみなかった。一般職は遠くの支店には転勤にならないと聞いていたけど、話が違うじゃない。

という事を支店長に対してぶつけたかったけど、内示を受けるしかないので、「承知いたしました」としか言えなかった。