結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました

先生の豪邸なら一部屋ぐらい空いているだろうな。
いや、先生の所は一番ありえない。

こんな事を考えるなんて、追い詰められている証拠だ。冷静になれ。まだ二週間ある。きっと住む所は見つかる。独身寮だって空きが出るかもしれない。とりあえず今週末は不動産屋を回ろう。

そして訪れた週末。女性の不動産営業の方に付き添ってもらって内見に行った。

一つ目の物件は2階建てのアパート。女性入居者が多いと聞いてほっとした。築20年とあったけど、外壁を塗り替えたばかりだからそんなに古くない。最寄駅まで徒歩30分だけど、自転車を使えばいい。一軒目から希望の光が見えたと思った時、隣室から喘ぎ声が聞こえてくる。時刻は午前11時。不動産屋さんも私も凍り付いた。

「ど、土曜日ですしね」

不動産屋さんの言葉に私も「そうですね。土曜日ですからね」と返す以外なかった。そして、今度は上の階から大音量の音楽が流れて来てびっくりした。さらに赤ちゃんの泣き声がどこかでする。そして、ベランダを覗いた時、信じられない事に上の階から茶色く濁った水が流れて来た。上の住人がデッキブラシのような物でゴシゴシとベランダを掃除しているようだった。

じゃばっとまた水が撒かれる気配がした。1階のベランダにポタポタと濁った水が滴り落ちる。洗濯物を干していたら絶対に被害にあっている。この部屋が空室だから好き勝手にやっているのかもしれないが、ありえない。ここに住んでいる人間はモラルがないのか？

「次、ご案内します」
私の表情を見て不動産屋さんが言った。