結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「九条さん?」
「先生、私の体調を気遣ってくれるのならお帰り下さい。先生がいてはゆっくり休めません」
「九条さんは一人暮らしですよね?」

この人は急に何を言いだすのだ。

「はい」
「お父様との関係はこじれていて、お家には頼れないですよね」
「まあ、はい」
「今日は九条さんの部屋に泊まる事にします」
「はあ?」
「一人暮らしの婚約者の看病をする必要があります」
「こ、婚約者! ちょっと、それって私ですか?」
「そうですよ」
「結婚はお断りしたはずです」
「わかっています。でも、僕は九条さんと結婚する意志を曲げませんから」
「私だって意志を曲げませんから! 婚約者にはなりませんよ!」
「そんなに大声を出しては疲れますよ。お粥でも作りましょうか」

先生が涼しい顔で微笑む。
全然、私の言葉を聞いていない。腹が立つ。

「結構です! 看病もお断りします! それに私は寝込んでいる場合じゃないんです! 住む所も探さなきゃいけないし、引っ越しの準備もしなきゃいけないですから」
「それについては提案があります」
「何ですか?」
「九条さんが希望する条件の賃貸物件を紹介してあげます」
「えっ」
「ベリが丘駅、徒歩10分。オートロックのマンションで、家賃は九条さんが希望している価格で紹介できます」
「本当ですか!」

そんな夢のような条件の賃貸マンションがベリが丘タウンにあるなんて信じられない。
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