結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「まさか先生の家ではありませんよね?」

念の為聞いてみる。

「僕はその方がいいですが、九条さんは絶対に嫌でしょう」
「嫌です。先生と同居なんてありえません」
「わかっていますよ。ちゃんとした賃貸物件ですよ。直接大家さんを知っているので、その分、家賃を安く紹介できるんです」
「あの、紹介してもらっても先生とは結婚しませんよ」
「九条さんの弱みにつけ込む事はしませんから安心して下さい」
「本当に?」
「はい」

嘘みたいな話。先生が何の狙いもなくそんな事を言ってくるなんて。

「何を企んでいるんですか?」
「何の企みもありませんよ」

先生の言葉を素直に受け取れない。

「先週、ホテルで会った時、ただより高いものはないって、先生、言ってましたよね?」
「そうでしたっけ?」
「とぼけるんですか? やっぱり何か良からぬ事を企んでいるんですか?」
「僕だって純粋に教え子が困っていたら助けたいと思いますよ。それに大家さんも空室にしておくよりは誰かに住んでもらった方がいいと言っていましたから。九条さんに住んで頂けると助かるんです。僕は大家さんの役に立ちたいんです」
「本当にそれだけですか?」
「はい。それだけです」

怪しい気もするけど、今はそんな事を言っている場合じゃない。
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