結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「先生、本当に何もないんですよね」
「ありませんよ。強いて言えば、九条さんとご近所さんになれて嬉しいぐらいです。僕はベリが丘に住んでいますから」

先生が住んでいるのは確かノースエリアのセレブな豪邸が並ぶ住宅街。
私が希望する家賃から考えると、紹介してくれる賃貸マンションがノースエリアにあるとは思えない。

同じ街に住んでも、きっと地域が違うから先生にそんなに会う事はないだろう。

「そうですか。では、先生のご好意に甘えさせて頂きますが、今日はお帰り下さい」
「泊まり込んで看病しますよ」
「そこまで悪くないから大丈夫です」
「そうですか」

先生が立ち上がり、コートを着た。あれ? あっさり帰るの?

「泊まり込んで看病したい所ですが、今日は帰ります」
「あの、先生が紹介してくれる物件はいつ見に行けますか?」
「明日にでも紹介できますよ」
「じゃあ、明日、見に行きたいです」
「わかりました。では、明日午後1時、ベリが丘駅待ち合わせでいいですか?」
「はい」
「ちゃんと休むんですよ」

先生の手が私の頭を二度撫でる。小さな子供の頭を撫でるように優しかった。先生の手の感触を感じて胸が熱くなる。
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