結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました

「お上がりください」と勧められて、お部屋に上がらせてもらった。
トイレ、パウダールーム、バスルーム、12帖のLDK(しかも広々カウンターキッチン！　コンロが三口！)、ウォークインクローゼット付き6帖の洋室。それから広いベランダと見せてもらった。夢のような世界がここにはあった。こんな部屋に住んでみたかった。という憧れが全部詰まっている。本当にここ家賃6万円？　このマンションが建っているのが、人があまり住んでいない田舎だったらあるかもしれないと思うけど、ここは人気のベリが丘。絶対にありえないと思うんだけど。

「何かご質問はございますか？」
「あの、ここって家賃おいくらなんですか？」
「6万円でございます」

本当に6万円なの！
びっくりして鈴木さんを見ると、鈴木さんはにこやかに微笑んだ。

「あの、20万円の間違えでは？」
「6万円でございます」
「本当に？」
「はい。こちら、物件の案内になります」

書類を見せてもらうと1002号室の家賃は本当に6万円とあった。

「まさかお化けが出るのでは？」

そうとしか思えない。このレベルの物件だったら普通は20万円、いや、30万円ぐらいしそうだ。

「お化けも出ません。こちらの建物、まだ建って四年ですし」

案内にも築年数4年とあった。

「じゃあ、耐震偽装をしているとか？」
「それも大丈夫でございます」
「怖い人が住んでいるとか？」
「大丈夫です」
「騒音がするとか」
「防音がしっかりしていますから大丈夫でございます」
「じゃあ……」
思いつく限り家賃が安い理由を口にしてみたが、どれも違うようだった。