結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「待って下さい。確かに僕のやり方はズルかった。でも、こうでもしないと九条さんは僕の世話にならないでしょう?」

端整な顔を歪めた先生が珍しく余裕のない表情をしている。

「九条さんが心配だったんです」

心配だと言われる度に先生と対等ではない気がして腹が立つ。私はそんなに可哀そうな人間じゃない。

「先生に心配してもらわなくても大丈夫です!」

先生の手を振り払って、全力で玄関に駆けた。それから、怒りに任せて勢いよく玄関ドアを閉めた。先生が追いかけてくる気がしたけど、先生は部屋から出て来なかった。目の前のエレベーターに飛び乗って、閉まるボタンを連打する。扉が閉まった瞬間、いじけた気持ちが溢れてじわっと目頭を熱くさせる。

一番腹が立っているのは、先生の善意に素直になれない自分だと気づいて涙が零れた。

本当、私は何をやっているんだろう。
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