結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
オールバックの髪型にメタルフレームの眼鏡をかけた南係長は仕事が出来そうだけど、冷たそうでちょっと怖い。突然現れた南係長の姿に私だけではなく、お客様も動揺したようで目が泳いでいた。

「い、一回だけだよ。たった一回でローンが組めないのかよ」
「その一回の延滞分をちゃんと支払いましたか? それとも支払わずにカードが強制解約になりましたか?」
「しょうがないだろ。支払いたくても金がないんだから」
「借りたお金は返済しなければいけませんよ。それがお客様の信用をあげる事になります」

眼鏡のフレームを押さえながらお客様を見る南係長が、問題のある生徒を叱る学校の先生のように見えて怖い。お客様に少し同情してしまう。

「説教じじいかよ。もうこんな銀行来るか!」

男性のお客様が苛立ったように相談ブースから出て行く。
お客様が帰ってくれた事にはほっとした。

「九条さん、大丈夫ですか?」

南係長と目が合い、ピンと背筋が伸びる。

「は、はい。ありがとうございました」
「何かあったら呼んで下さい」

そう言って南係長はカウンターから離れた。助けてくれた事はありがたかったけど、南係長はちょっと怖い。前の支店には南係長のような威圧感のある人はいなかった。南係長に馴染めるか心配になる。
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