結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました

定時で仕事が終わり、更衣室で制服から私服に着替えている時、同じ融資課のパートさんが南係長は29歳の独身だと教えてくれた。一流大学卒でエリートコースを歩いているらしい。それに加えて長身である事と、キリッとした精悍な顔立ちで、ベリが丘支店の女性行員の間では南係長は観賞用のイケメンとして人気があるらしい。

ふーんと思いながらパートさんの話を聞いた。
南係長が女性たちから人気があったのは少し意外だった。確かに仕事ができる人だとは思った。容姿もいい方だと思う。でも、南係長は親しみのもてるタイプではない。威圧感があって近寄りがたい存在だ。とにかく南係長に目を付けられないように気をつけて仕事をしよう。

銀行を出てふっと息をつくと、北沢先生が浮かんだ。
会いたいけど、会いに行く勇気がない。同じ街に住む前の方が気楽に先生に会えたかもしれない。

偶然、どこかで先生とすれ違わないかなと思いながらサウスエリアを歩いた。
ショッピングモールの中を歩きながら、背の高い男性を見る度にドキッとした。もしかして先生？　と思う度に違う人だった。先生がショッピングモールに来る訳ないかと思いながらも、先生の姿を捜してしまう。かなり重症だと思う。恋わずらいは厄介だ。こんな事、恥ずかしくて舞子にも相談できない。