結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「九条さん?」と私の方に来た南係長に声をかけられて驚いた。
今日配属になったばかりなのに、私の名前を覚えていてくれた。さすが仕事のできる人だ。

「はい。九条です。南係長、お疲れ様です」
「お疲れ様です。九条さんもお買い物ですか?」
「夕食のお買い物です。美味しそうなトンカツがあったので買っちゃいました」

緊張のあまりトンカツの事を言ってしまった。恥ずかしい。そこまで言う事はなかった。

「僕もトンカツ買っちゃった」
少し砕けた言葉にえっと思ったら、ニコッと南係長が微笑んだ。
怖い人だと思っていたから笑顔がちょっと可愛いのが意外だった。

「じゃあ、また明日。お疲れ様」
南係長はエコバッグを持って出入口に向かった。
南係長もベリが丘に住んでいるのかもしれない。

銀行では怖そうな上司に見えたけど、銀行の外で会う南係長は気さくな感じに見えた。
南係長に対して不安があったけど、そんなに怖い人じゃない。大丈夫かも。

ほっと胸を撫でおろしてスーパーを出た。
群青色の空を見上げると、綺麗な満月が浮かんでいた。先生も満月見ているかなと思った時、スマートフォンが鳴る。

先生?
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