結婚願望ゼロだったのに、一途な御曹司の熱情愛に絡めとられました
「だ、大丈夫です」
南係長に答えると、「本当に?」と心配そうに聞かれた。昨日のお客様の事があるから心配してくれているんだ。
妹に小遣いを請求されているなんて、みっともなくて絶対に言えない。早く姫香を帰さなきゃ。

「はい。すぐ対応しますから」

南係長はじっと姫香を見て、首を傾げ、奥に引っ込んだ。

「今の誰!」

姫香の目がキラキラと輝く。

「上司です」
「ねえ、紹介してよ」
「お客様の口座に振り込んでおきますから、今日の所はお引き取り下さい」

5万円の出費は痛いけど、姫香を帰らせるのはこう言うしかない。

「本当! お姉ちゃんありがとう!」

機嫌良さそうに笑う姫香を見て、私は一生、この子に搾取されるんだろうかと思ってしまう。
どうして私の家族はこんなに自分勝手なのだろう。父も瑠璃さんも姫香も、私を都合のいい道具のように利用する。私は九条家の人間に利用される為に生きている訳じゃない。悔しい。腹が立って悲しくて堪らない。
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