クズな君と恋したら
「俺の仕事は瀬戸財閥の令嬢を護衛することなんだ。……俺は君のボディガードで、それ以上でも以下でもない。仕事の関わりなんだよ」
「っ……ぅ」
ポロリと溢れる熱い涙。
まるで綾都のことが好きって気持ちを否定されたみたいで……。
絶対にしてはいけない恋だって……してしまったら処分を受けるような、そんな危険な気持ちだってわかってるのに……。
「私はただ___」
綾都は、私を見ずに笑った。
「休め、って言いたいんだろ?」
わかってる、とため息混じりに言う綾都。
「伊吹くんだっているから……休んで、ほしい……」
綾都は、ひとりでなんでもかんでもやろうとしすぎだよ……。
伊吹くんも、綾都のこと心配してたのに。
「私の護衛は他の人もできる___」
「なんで伝わんないんだろーね」
「え……?」
私の声を綾都が遮ったかと思えば、綾都がいつのまにか目の前に立っていた。
「っ……!」
そして次の瞬間、私の視界は、綾都のいつもつけているネクタイでいっぱいになる。
後頭部に回された綾都の大きな手を感じて、今、私は綾都に抱きしめられていることを理解した。
「他の誰にも……夏芽の横についてほしくないに決まってるだろ」
「っ、え……?」
なに、それ……。
「俺が守りたいんだよ」
代わりたくない、他の誰にも。そう耳元で囁かれ、心臓が早鐘を打つ。
綾都の高い体温が、さらに強く私を包んだ。
___そんなの、まるで……。
「……渡さない」
私のこと、独占したいって……そう言っているようにしか聞こえないよ。