クズな君と恋したら







初めて私の立場が、どれだけ危険なもので地位のあるものなのかをはっきりと理解して、土日を挟んだ月曜日。


なぜかその日、玄関を出ると、いつも門の前に止めてあるはずの黒塗りの車はなくて。


送迎の車は……?


そんな疑問を抱く前に、私の思考は視点は一点に集中した。




「え……」



「準備おっそいね」



「な、な……っ」




玄関で私を待っていたのであろう水上は、いつもの黒いスーツではなく、私の学園の制服を見に纏っていた。




「いやー、さすがに無理があると思ったんだけど」



あは、と苦笑いを浮かべる水上。

背が高く、スラっと伸びた長い足が引き立っていた。


薄めのブラウンのブレザーに、真紅のネクタイがよく似合っていた。



で、でも、さっき水上が言っていた「無理がある」って……?



「じゅうぶん似合ってる、けど……」



もしかして水上って……



「えー、俺がガキっぽいって言いたいわけ?俺、もう23だけど」


「えっ……」



に、にじゅう……さん……!?




「ちょ、ちょっと待って、なんで!?なんで23歳が制服なんて着てるの……!?」




制服を着ても違和感がないし、すごく肌も綺麗だから、てっきり私と同じくらいの年齢だと思ってたのに……。

23歳だったなんて……。

しかも、23歳が高校に行くってこと!?




「また、俺がいない間に攫われたらすぐには助けられないでしょ」




いつも一緒にいれるように、と私を見て漆黒の瞳を三日月の形にして首を傾げた。

た、たしかにそうだけど……っ。




「もちろん、転校生っていう設定だよ」




いや、そりゃそうなんだろうけど……っ!

すぐにこんな体制を整えられるって、本当に水上は何者なんだろう……。



「じゃ、ちょっと不便だけど、歩いていこーか、お姫さん」



「っ、は、はい……」



水上は、今日もいい天気だなー、なんてことを呟きながら、私の隣に並んだ。








< 11 / 165 >

この作品をシェア

pagetop