クズな君と恋したら



綾都にこんな姿を見られたらきっと、幻滅される。

……それでも、会いたい……そう思っている自分が虚しくて、辛くて。



「はははっ、好きにし放題だ!」



とうとう男が私の背中に手を回した、その時だった。





バリッ!バリバリ……ッ!




ガラスが割れる音がすると共に、カーテンを押し除けて部屋に入ってきた真っ黒なシルエット。

パリン……と、身に纏ったスーツについていたガラスの破片が床に落ちて、小さくはじけ割れる。


そして、その人物は私のもとへ歩いてきながら首を傾げた。

その反動で、毎日のように書いている、チャリン……という、金属のピアスが鳴る音……。


聞いただけでわかる。


風でふわりと揺れたカーテンから見える夜景が、この部屋が高いビルの最上階に近い場所だということがわかる。


……普通に考えて、人が入れるわけないところから。しかも、扉じゃなくて窓を割って入ってくるような、ぶっとんだことをするのも。



「あーあ、俺の大事な大事なお姫さんに何やってんのー?」



私がどこにいようと、絶対に見つけてくれるのも。


私のことを、名前でもなく、苗字でもない"お姫さん"だなんて今時にそぐわない呼び名で呼んでくるのも。



___世界中、どこを探しても。



「あ、やと……」



綾都しかいないから。



「なんだてめぇっ!ただじゃおかね___ぐっ」





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