クズな君と恋したら
私に馬乗りになっていた大きな男が綾都に襲い掛かろうとした瞬間、1人でに倒れる男。
……そして、音もなく、他の2人も突然倒れた。
「……バカだねー?ほんとに」
「っ、う……あやと……っ」
私の目の前にしゃがみ込んで耳のピアスを静かに鳴らす綾都の手には、漆黒で光沢のあるピストルが握られていた。
なんでここがわかったの、とか、どうしてここにいるの、とか。
聞きたいことは山ほどあるっていうのに、頭の中で整理がつかなくて、代わりに再び涙が溢れてくる。
「……何された?」
漆黒の瞳が私を吸い込むように見つめて、そう問いかけられる。
ビク……と肩が小さく震えた。
……言えない。もしも言えば、綾都はどうしてくれる……?
きっと引いちゃうよね。
知らない人にキスを許すような軽い女だって、そう思われちゃうに決まってる。
「……」
綾都の目を見てしまったら、全部言いたくなるし、逃げ出したくなっちゃう。
「……言わないとわかんないけど」
ギュッと目を瞑って、無言で首を横に振る私を見て、綾都が小さくため息をついた。