クズな君と恋したら
「す、すごい人気だねぇ、水上くん」
「うん。それよりさ、ちょっとトイレ行かない?」
「え、うん。さっきも行ったよね?」
昼休み。
心は、机にお弁当を広げながら、女子生徒が群がるある席を見て呟いた。
HRが終わった瞬間から、一気に水上はクラスの人気者になり、早速女子が目を光らせていた。
中には、もう告白をした子もいるとか、いないとか。
どちらにしろ、みんな話と行動が早すぎる。そして、気持ちが動くのも。
時々目が合う水上との接触は絶対に避けたい。
私の周りを見張ってくれているんだろうけど、やっぱりボディガードだと思うとクラスメイトとして接することなんてできない。
それに、クラスにいる時の私を見られるのもなんだか恥ずかしい。
「ねー、暑いからクーラー効いてる教室戻ろうよ!」
「ちょっと巻きが緩いの!」
だからこそ、女子と男子だという境界線をいいことに、毎時間トイレにこもっているのだ。
「えー、なんでよぉぉ……」
心は優しいから私のわがままに付き合ってくれているけれど、さすがに申し訳ない。
……仕方ないか……。
「ごめんね心。私はもうちょっとしてから戻るね」
「りょーかーい」
心を先に教室に戻らせて、私はもう少しトイレでサボることにする。
はぁ……これからの学校生活、ずっと水上を避けながらになるのか……。
休み時間はずっとトイレになるんだろうなぁ、とため息をつく。
「……あ、そうだ」
ずっとトイレにいるのも、みんなに迷惑がられるだろうし、いいところ思いついた!
トイレの近くに、非常階段があったはずだ。
あそこなら、滅多に人は来ないしめだたない。
___そう。だから、あそこでキス、してたんだろうなぁ。
浮気現場をこの目ではっきりと目撃してしまったあの時の状況が脳裏に蘇る。
……ダメダメ、そんなの今更気にしていたって。
前に進まなきゃ。
あんなやつ、見返すって決めたんだから。
そうよ、男は踏み台、使い捨て。
「男は踏み台、使い捨て。男は踏み台、使い捨て___」
「やっと出てきたと思えば、とんでもないこと言ってんね。うける」
「わぁっ!びっ……くりした!」
トイレを出て非常階段に向かおうというところに、背後から気配もなくそんな声が聞こえたかと思えば、そこには水上の姿。