クズな君と恋したら
「さっきの続き、やるに決まってるでしょ?水上綾都くんの前で」
「っ……!」
背中が一瞬で凍るように冷たくなる。
冷や汗が噴き出てきて、グッと奥歯を噛み締めると、そんな私を見て浮本さんは面白がるかのように甲高い笑い声を上げた。
「はーい、却下。無理でーす」
そんな時、突然頭上から綾都の声がしたと思ってみれば、流石の綾都もまさかそんなことになるとは予想もしていなかったらしく。
苦笑いしながら天井を仰いでいた。
もちろん、そんなことを浮本さんが許すはずもなく。
「はぁ?何言ってんの?アンタ、自分の立場わかってて___」
「俺がなんでも受けるよ。だから……」
綾都のピアスがチャリンと鳴った途端、部屋の中の空気が一気に変わる。
「っ……!」
ビリビリと、空気に電気が走っているみたいな。
この場にいるだけで力が抜けてしまいそう。まるで、意識が吸い込まれてしまうような。
一瞬で冷や汗が噴き出る。
___殺気。
そんな言葉が脳裏に過ぎる。
単語は聞いたことがあるけれど、そんな雰囲気を人間が作り出すことができるのか、本当に実在するものなのかまでは知らなかった。
威圧感があって、何かを命令されたら従ってしまうような、そんな有無を言わせない威圧が、この部屋に重くのしかかっていた。
そして綾都は、今まで見たこともないような冷たい無表情で口を開いた。
「夏芽に手を出すことを許さない」
浮本さんは、唇をぺろりと舐めて「えぇ、いいわよ」と頷いた。