クズな君と恋したら
閉まっていた部屋の扉が勢いよく開いて、スーツ姿のシルエットが素早く部屋の中に入り込んできたのだ。
「っ、この……誰だぁ!」
私を拘束していた男が、そのシルエットに向かって襲いかかった……と思えば、バキッ!と何かが折れるような、そんな鈍い音が聞こえてから、男は床に倒れた。
___こうして、2人のシルエットはどんどん男を倒して、とうとう部屋には綾都と私、そして謎の2人の4人だけになった。
すごい……。
あんなに大きくて力が強そうだった男が、たった2人だけであっという間に……。
2人は、ふぅ……と一息ついたかと思うと、私に駆けよった。
「あ……」
「夏芽さん、大丈夫っすか!」
近くで見て、ようやくわかった。
心配そうに私を覗き込む彼は、伊吹くんだった。
どうしてここに伊吹くんが……。
伊吹くんの横を見ると、パーティーでいちばん最初に話しかけてもらった人の姿。
「北斗、さん……?」
間違いない。
銀色の髪の、モデルさんみたいな人。
北斗さんは私を見てニコリと微笑むと、私の頭に手を置いた。
「大丈夫ですか?瀬戸令嬢」
こくりと頷けば、わしゃわしゃと頭を撫でてもらえた。
まさか、伊吹くんと仲間だったなんて……。
ということは、と思って、綾都の方向を見ると、案の定綾都は少し不機嫌そうな表情をしながら私たちを見ていた。
「北斗、お前、きたない手で夏芽に触るのやめてくんない?」