クズな君と恋したら




閉まっていた部屋の扉が勢いよく開いて、スーツ姿のシルエットが素早く部屋の中に入り込んできたのだ。



「っ、この……誰だぁ!」



私を拘束していた男が、そのシルエットに向かって襲いかかった……と思えば、バキッ!と何かが折れるような、そんな鈍い音が聞こえてから、男は床に倒れた。


___こうして、2人のシルエットはどんどん男を倒して、とうとう部屋には綾都と私、そして謎の2人の4人だけになった。


すごい……。

あんなに大きくて力が強そうだった男が、たった2人だけであっという間に……。


2人は、ふぅ……と一息ついたかと思うと、私に駆けよった。



「あ……」


「夏芽さん、大丈夫っすか!」



近くで見て、ようやくわかった。

心配そうに私を覗き込む彼は、伊吹くんだった。


どうしてここに伊吹くんが……。


伊吹くんの横を見ると、パーティーでいちばん最初に話しかけてもらった人の姿。



「北斗、さん……?」



間違いない。

銀色の髪の、モデルさんみたいな人。



北斗さんは私を見てニコリと微笑むと、私の頭に手を置いた。



「大丈夫ですか?瀬戸令嬢」



こくりと頷けば、わしゃわしゃと頭を撫でてもらえた。

まさか、伊吹くんと仲間だったなんて……。

ということは、と思って、綾都の方向を見ると、案の定綾都は少し不機嫌そうな表情をしながら私たちを見ていた。


「北斗、お前、きたない手で夏芽に触るのやめてくんない?」



< 136 / 165 >

この作品をシェア

pagetop