クズな君と恋したら
約束
自分でもどうかしていると思う。
何も悪いことをしていない人のことを殺そうとするような人のことを庇う日が来るなんて思ってもいなかった。
「瀬戸令嬢、失礼ですが、邪魔です」
……でも。
私は後ろを向いて、項垂れるように床に座り込んでいる浮本さんの前にしゃがみ込む。
「じゅうぶんに反省してるのなら、ここまでしなくてもいいんじゃないかな……」
きっともう、これで分かったと思う。
絶対にしてはいけないことをしてしまったってことを。
それでも銃口をそらそうとしない北斗くんは、敵の排除の邪魔をする私を鋭く睨む。
「君がなんと言おうと、悪人は排除の対象だ。また人を殺そうとしたらどうする?」
「それは……」
「そういう奴は、何度でも同じことを繰り返す。相手に復讐をするために、自分の快楽のために」
ぐ、と言葉に詰まってしまう。
ダメだ、自分から見ても明らかに私の意見の方が弱い。ちゃんとした理由になっていない。
実際、私を崖から突き落としたあの後、綾都が浮本組を追い詰めて倒産寸前まで……と聞いていたから、浮本さんもじゅうぶん反省しただろう。
そう思っていたのに、反省どころか復讐をするために今こんなことになっているんだ。