クズな君と恋したら
な、なんでここに……っ!
「お姫さんが俺のこと避けちゃうから」
ニッコリと笑みを浮かべる水上の女の子のファンはどこへ行ったのだろうか。
「べ、別に避けてなんか……っ」
「俺、いちおーボディガードだから、お姫さんのこと守んなきゃいけないわけ」
チャリン、と彼の金色のピアスが鳴る。
「っ……」
ジリジリと近寄ってくる水上の美形に思わず後ずさる。
「じゃ、じゃあ……」
こんなに近寄られたら、目なんて合わせられない……っ!
「じゃあ?」
「っ、わ、私のボディガードなんだから……ちゃんと仕事……してよね」
朝から、彼が女の子たちに囲まれるたびに、心のどこかで渦巻いていた感情。
わ、私、なんてこと言ってるの……!
そんなの、ずっと私のそばにいてって言ってるのと同じじゃない……!
かぁぁっと顔に熱が集まってきて、くるりと水上に背を向ける。
「わ、わかったらさっさと教室戻って!」
一緒にいたら、勘違いされるじゃない!
「お姫さん、こっち向いてよ」
「む、むりっ……」
すぐ近くに水上の気配を感じて、振り返ろうにも振り返れない。
トン……と、目の前の壁に水上の手が置かれる。
「今のって、ずっと一緒にいていいってことで合ってる?」
「っ、」
耳元で囁かれて、ぴくりと肩が跳ねる。
そ、そんな聞き方……ずるいっ……。
「ねー、そーゆーことだよね」
も、もう……っ!
あまりにも近すぎる距離に耐えられずに、必死で頷くと、そばでクスリと笑う水上。
「かしこまりました、夏芽サマ」
そう言うと、背後から、気配は一瞬にして消えた。
まるで、存在が一瞬で消えたような。そのくらい、静かに。
ドキドキと大きく鳴る心臓付近をギュッと掴んで、赤くなった顔をパタパタと手で仰いだ。