クズな君と恋したら
「は……っ?」
思わず顔を上げて、再び彼と目が合う。
水上の目は、未だ私に真っ直ぐ向けられていた。
今、なんて……。
一瞬の沈黙があった後、どっと教室内が騒がしくなる。
それは、普段のガヤじゃなくて、私と水上の関係に対する戸惑いの声。
___夏芽にあげる。
そんな彼の声が頭から離れなくて。
持っていたドーナツの生地を、ボトッと落としてしまった。
「え……なんで瀬戸さんなの?」
そんな小声が聞こえてくる。
ほら、ほらほらほら!
私たちの関係、みんなに不審がられてるじゃない……っ!
「夏芽にあげたいから」
しかも名前で呼び捨てまで……っ!
みんなから注目を集めてしまったことに対して、顔がみるみる熱を持っていく。
「えぇーっ、そんなこと言わないで、あたしにちょうだい!瀬戸さん、欲しいなんて言ってなくない?」
もういいって、その子にあげてよ……っ!
心の中で必死に祈る。
私、もうこれ以上水上とのことで目立ちたくないよ……!
「ちょっとムリかなぁ、オレ、夏芽に忠誠誓ってるから」
「なっ……!」
ここで私たちの契約関係までバラすつもりなの……!?
予想外の答えに心拍がどんどん上昇していく。
やばい、やばいやばい……!
すでに水上を狙う女子たちから、痛いほど睨まれているっていうのに!