クズな君と恋したら
しかも、今、陰湿なの好きって言ってたし!
まだバクバクと破裂しそうなくらいに鳴り続ける心臓。
水上って、あまり気配を感じないっていうか。
だから、近くに水上がいても気づかないなんてことは多々ある。
「てゆーか、血出てるよ」
「……わ、わかってる」
水上は、席に座る私の正面に回ってきたかと思うと、しゃがみ込んで私の手を取った。
そして、相変わらず光を持たない漆黒の瞳で傷口を数秒見つめた後___
「っ……!」
血が流れ続ける私の指先に、水上は自らの唇を傷口に重ねて。
キスをした___。
「なっ……」
声すらまともに出すことができなくて、口をパクパクさせる私を、水上は面白がるように見つめていた。
ちゅ、ちゅ……と、何度もキスを繰り返す水上。
私の流れる血を掬い取るように___。
「ねー、この傷どーやってついたの?」
「え……」
即座に「まずい」そう思った。
いつのまにか血は止まっていて、深い傷が見えていた。
その深さを見て、水上は疑問に思ったのだろう。
「……は、ハサミで……間違えて切ったの」
……言わない。絶対に言いたくない。
物が盗まれた時も、スリッパで生活をしていた時だって。
理由を聞かれても、水上には絶対に言わなかった。
嫌がらせを受けている自分の姿を見られたくないという変なプライドが邪魔をしていて、言いたくないと思って、とっさに変な言い訳をしてしまう。