クズな君と恋したら
「はぁーっ、今日も学校、ほんっとーにやだ!」
朝、学校へと向かう車の中で盛大にため息をつく。
私が通う私立高校___私立音葉学園には、それはもうたくさんのお金持ちが在学している。
世界的に有名な企業の跡取り息子だったり、娘だったり。
俗に言う、御曹司や令嬢のこと。
そんな人がほとんどの音葉高校に、私も通っているのだけど……。
それはもう、マウントの取り合いばかりで。
学校へ行けば、昨日あったことやしたことの自慢大会。
親の権力を自分のもののように自慢する、戦場なのだ。
「大体、他人の実力を自分のもののように話されても……ね、どう思う?水上サン」
運転してくれている水上サンに話しかけると、水上サンはミラー越しにちらりと私を見た後、「さあ」と首を傾げた。
「うける」
は、はぁ!?う、うける……って。
全く笑ってないけど……!?
___そう、この男、水上綾都は、私のボディガードでありながら時々タメ口、面倒くさがり、そして軽そう。
クズの特徴三拍子が全て揃った、正真正銘のクズ!
……な、気がする。
「ついたついた、はいはいさっさと行ってクダサーイ」
そんな水上サンに対してブツブツと文句を言っていると、いつのまにか学校に着いていて。
済ました顔で車から追い出されてしまう。
も、もうっ!
なんなのよ、あのボディガード!
すっごくイケメンなのに、あの性格じゃ絶対一生結婚できないよ!
学校の門から出ていく高級車に「べーっ!」と舌を出してやった。
絶対にいつか、吠え面かかせてやるんだからっ!
「昨日、お父様がクルージングに……」
「わたくしのお父様なんて、投資金を___」
はぁ、とため息が口から溢れる。
みんな、この家に生まれてよかったなんて、一回も思ってないはずなのに。
どうしてそんなふうに無駄に高いプライドを持って、本音で語り合えないんだろう……。
私は、重い足を必死に動かして、生徒玄関に向かった___。