クズな君と恋したら
下山し初めてすぐのことだった___。
「瀬戸さん!」
後ろから慌てたような声が聞こえると同時に、肩を叩かれる。
「う、浮本さん?どうしたの?」
そう聞くと、浮本さんはもと来た道を指さす。
「先生が呼んでたよ!確認したいことがあるって」
「えっ、ほんと?ありがとう」
先生が呼んでた……?なんの用だろう。もしかして、昨日の夜起きてたのバレちゃった……?
首を傾げながらも浮本さんにお礼を言って、持っていた折り畳み傘を心に渡す。
「私、すぐ戻るね。それまで待っててくれる?」
「え、いやいや、いいよ!これ夏芽のだし……」
「ほんとにすぐだから!じゃ、行ってくるね!」
心が濡れちゃう方が、私はいやだ。それに私、小さい頃から風邪を引きにくい体質だから少し濡れたって問題はない。
すると、その様子を見ていた浮本さんが、私を手招きした。
「じゃあ、それまであたしも付き添うから、傘入りなよ!」
「い、いいの!?助かるっ」
浮本さんも、こういうふうに優しいところもあるんだよね……。
大人しく浮本さんの傘に入れてもらって、来た道を辿っていく。
「じゃあ、行こっか」
「うん!」
浮本さん、こうやって笑ってればじゅうぶん可愛いのになぁ。
私たちは再び山を登り出す。
少しだけ強まった雨に、胸騒ぎがした___。