クズな君と恋したら






「あっ、おはよー!夏芽!」


「おはよう!」



そんな学校にも、私にとって本当に大切な友達もいる。



「今日の授業は5教科揃ってるよ……」


「えぇ……テンション下がるね」



感情の起伏が大きくて、まるでくるくると動き回る小動物みたいな私の親友、日比野心とは、学校で出会った。


心のお父さんがお洋服のブランド起業者で、とってもお金持ちなのに、それを表に出して着飾ろうとしない素直な子。



だから、そんな心が大好き。



「っていうか、夏芽、最近彼氏とどうなの!?」


背筋がぎくっとする。

さ、最近自分の方から話していなかったから、そのうち聞かれるだろうとは思っていたのだけれど……。



「全然、何も進展ないよ」



そう、数週間前からお付き合いしている彼氏と、何もないのだ。

付き合ったばかりは、これから一緒にいろんなところに行ってハグも、キスも……たくさん楽しいことが待ってるんだろうなって浮かれていたけれど……。



いざお付き合いを始めたら、全くあっちの方から連絡もないし、学校でも話しかけられないし、なんなら他のこと付き合ってるなんてウワサまで耳にするし……。



「えぇーっ、やっぱりあの彼氏だめだよ!別れたら?」


「やっぱりそうだよね……でも……」



まだ好きって気持ち、あるのに……。

片思いをしていた相手だからこそ、その人に告白された時はすっごく嬉しくて、すぐに返事をした。



やっと両思いになれて、もっと好きになれたのに。その好きを自分から切っちゃいたくない、そう思ってしまう。




「でも、他の子と付き合ってるウワサあるじゃん」


「……うん」


「じゃあ、直接問い詰めてきなよ。もし他の子と付き合ってたら、浮気になるんだから」




プンスカ怒っている心。

このウワサは心から聞いたものだけど、他の生徒にも目撃証言者がいるらしい。



___休日、手を繋いでデートしているのを見た……って。



まさか……そんなわけ。

ずっとそうやって自分に言い聞かせてきたけれど、さすがに私も気になるものは気になる。



自分の目と耳で確かめなきゃ。



このまま曖昧な関係を続けている方が、別れるよりも辛いから。



大丈夫、私の彼氏が浮気なんかしてるはず___











「……は?」











女子トイレの近くにある、屋上へと続く人気の少ない階段で、知らない女の子と濃厚なキスをしていた私の彼氏は、浮気をしていた。











< 4 / 165 >

この作品をシェア

pagetop