クズな君と恋したら
そりゃあそうだよな。
表社会で活躍する財閥の令嬢がこんなになっているんだ。
「しかし昨日、ミスをカバーしていただきほんとにありがとうございました!」
「あー……あったなそんなこと」
昨日、伊吹の提出した書類が外部に漏れてしまうというなかなかにまずい事態が発生した。
責任者である俺が、全て対応したのだが、本当に面倒くさかったんだよね。
「どーでもいーよ」
「っ!……気をつけます」
そう、こんな組織俺にとったらどうでもいい。別に壊滅しようと、襲撃されようと。
___でも、仕事は仕事だ。
「つきましたっ、瀬戸令嬢は俺が運びま___」
「触ったら殺すよ」
ホテルに入り、ルームキー代わりのスマホをエレベーターにかざすと、最上階のスイートルームに勝手に行くようになっている。
ぐったりした夏芽を着替えさせて、部屋の暖房をマックスまであげる。
まずいな、少し低体温症気味だ。
___このままずっとそばにいてやりたい気持ちは山々なのだが。
あいにく急用ができたため、そちらを優先せざるを得ない。
「伊吹、点滴と看病、頼むね」
「はいっす!」
元気よく返事をした伊吹に、念のためもう一度「必要以上に触ったら殺すからね」と釘を刺して、ホテルを出た___。