クズな君と恋したら
2日目に泊まる予定のホテルの一室___。
「み、水上くんっ!瀬戸さん、無事だった……?」
夏芽を突き落とした女___浮本組合の娘、浮本恵が、部屋に来た俺に駆け寄る。
時刻は午前11時。
すでに生徒は下山し、ホテルに到着していた。
そんな中、俺は浮本恵に「部屋で1人で待ってて」そう言い残したのだ。
案の定、何を勘違いしているのか、浮本恵は少し頬を赤らめて頷いた。
「あたし、瀬戸さんのこと心配でっ……」
わざとらしく涙ぐむ浮本恵を部屋の奥に誘導する。
俺はそんな浮本恵を見つめ、笑いかける。
「へったくそな演技だねー、ココ、だいじょーぶ?」
そう言って、こめかみをトントンと叩く。
まず、浮本恵が俺に好意を寄せていることなんてわかりきってる。
それなのに、どうして拒まなかったのか。
___あれは観察だ。
この人間が、どれだけ夏芽に危害を与えるのかを見る為。
まあ、崖から突き落として殺人を働こうとする奴だなんて思っていなかったせいで夏芽が危なかったのだが。
「え?何言ってるの?あたし、ほんとに心配して___」
「気付いてんじゃない?」
「っ!?な、なんのこと?」
やっぱり。
その様子だと、俺の情報は浮本組合に行っているのか。
「……へーえ?ヤクザの娘のくせに?」
「っ!!」
図星、か。
俺は素早く浮本恵の背後に回ると、すぐさま手首を拘束する。
「1、抵抗しない事……。2、浮本組の拠点を教える事……。3、この指示に従う事」
ノー、そんな答えを言えば、どうなるかわかるよね?と軽く脅すと、すぐに女は必死になって頷いた。
「ねー、言っておくけど、君は今、俺の手のひらの中。……盗聴、盗撮……死んでもいーの?」
あは、と笑みを浮かべて、椅子の下やベッドの中に仕掛けられていた様々な小機器を取り上げ、指で潰す。
「なんで俺に近づいた?」
近くにあった椅子に座り、足を組んで首を傾げる。