クズな君と恋したら
俺に近づいても、何もメリットがないはずだ。
それなのに、なぜ夏芽を殺そうとしてまで俺を堕とそうと……?
「も、戻ってきて……欲しかったの」
「はー?」
「あ、あなたが戻れば、あたしと結婚して、あたしはお父さんに認めてもらえるっ」
何言っちゃってんの?と思った。
結婚って、コイツ一生できないでしょ。もちろん、俺もするつもりないし。
っていうか、こんな女としたくないし。
「あなたにもメリットはないはずっ!浮本にはお金も、地位もなんでもある!」
結局、名誉が欲しいってワケね。
「うける。ねー、水上って聞いて、なーーーんにも思い浮かばないの?」
ただただ人が持っているものを求めるだけで、頭も切れないんだ。
ほんとに笑える。
しばらく「水上……」と呟いていた女が、ハッとしたように顔を上げる。
「っ、も……し、かして……」
「俺、頭悪い子きらーい」
みるみるうちに青ざめていく女の顔は、俺をみて怯えたような表情をしていた。
「裏社会のトップシークレット……血も涙もない、キラー……」
「自己紹介どーも」
「そっ、そんなあなたがどうしてここに……!本来あるべき姿ではないはずよ!」
「うるっさいなぁ、声、大きいんだよ」
口角を上げてやると、一瞬で口を閉じる。
所詮、この程度。
浮本組___日本の中でもかなり大きなヤクザの集団。
反社と呼ばれる、闇の業界。
表社会では、工事会社として登録してあるみたいだけど、本来の姿はヤクザ。
そんな浮本組ももうすぐ俺が解体するんだけど。
「どうしてお前に情報を渡さないといけないワケ?メリットは?……所詮米粒みたいな子供が知ったかぶりするもんじゃないからね」
俺は浮本恵から拠点を聞き出すと、そのまま部屋の出口に向かう。
あーあ、仕事が増えちゃった。
一刻も早く夏芽のところへ行って、様子を見てやりたい気持ちは山々だけど、仕方ないか。
俺は部屋を出る直前、放心状態の女に向かって言葉を残す。