クズな君と恋したら
怒り
ハッと目を覚ます。
目の前には白い天井で、明るくて清潔感のある部屋___。
「っ、どこ……?」
見覚えのない場所に飛び起きると、先ほど強く打った背中が少しだけ痛んだ。
「お姫さんは寝起きも元気だねー」
「へっ!?」
反射的に声の主を見ると、そこには私を見て微笑む綾都の姿。
綾都は椅子に座って、長い脚を組んでいた。
「あやと……」
そうだ、私……倒れそうになったところで、綾都が助けに来てくれて……。
「痛む?」
「うっ、ううん……全然痛くないや」
へらりと笑うと、綾都は立ち上がって私のいるベッドサイドに腰掛けた。
「浮本恵」
「え……」
突然彼女の名前が出てきたことに、びくりと肩が跳ねる。
___私を殺そうとした人。
無意識に震えてしまう手を必死に止めようとするけれど、全く止まらなくて。
「警察に突き出そうか、殺そうか。……どっちがいいか選んでよ」
「え……?」
私に背を向けている綾都の表情は見えない。
いつものように声に笑いは含まれているものの、絶対に顔は笑ってない……。
「ま、ってよ。どういうこと……?殺すなんて……」
「ちゃんと綺麗にやるよ」
「そうじゃなくてっ……」
綾都は、何を言ってるの……?
「選ばせてあげるって言ってるの。殺すか警察か」
「そ、そんなのどっちもダメに___」
「どうして?」
綾都は、ゆっくりと私を振り向く。