クズな君と恋したら
妖艶な笑みを浮かべた綾都のサラサラな髪が、私のおでこにあたってくすぐったいくらい近くて。
ドクン、ドクン……と、早いペースで脈打つ心臓が綾都に聞こえないよう、必死に息を止めるけど。
「あは、顔真っ赤」
彼の美しい目が細められる。今にもその中に吸い込まれてしまいそう……。
「俺、まーじで疲れてんだよね。でも、俺のかわいーお姫さんが添い寝してくれるなら疲れ吹っ飛ぶかも」
そ、それって、一緒に寝るってこと……!?
そんなの無理だよ!
私の心臓が持つワケないじゃないっ!
ぶんぶんと首を横に振るけど、綾都は私を逃してくれない。
まるでとらえた獲物を離さない獣のように、私の目をジーッと見つめてくる。
「そーじゃないと俺、このまま寝ちゃいそー」
「えっ……」
こ、このままって、どのままよ……!?
まさか、綾都との顔が近すぎるこの体勢のまま?
もしくはこのまま綾都がうつ伏せで私に倒れかかってくるってこと……!?
顔を真っ赤にしながら目を泳がす私を、意地悪な綾都はとうとうカウントダウンを始めだす。
「いいって言わないの?さーん、にー、いーち___」
「わ、わかった!すればっ……いいんでしょ……」
あぁ、言っちゃった。
綾都と添い寝するだなんて。
ボディガードと添い寝することになるなんて、前代未聞よ。
しかも、選択肢がイエスしかないのをわかってて主人である私に強制的なお願いをしてくるのも。
私は、燃えてるんじゃないかってくらい熱くなった顔をパタパタと手で仰ぎながら、やっと解放してくれた綾都を睨む。