クズな君と恋したら
こくりと頷くと、伊吹くんは、あちゃーっと言いながら額に手を当てた。
「やっべー、綾都さん、言ってなかったのかー。夏芽さん、このことはシーでお願いしますね!」
唇に人差し指を立てて、お願いポーズをとる伊吹くん。
ちょっとだけ、綾都のこと知れたと思ったんだけど。
綾都には、私の知らない部分がたっくさんあるんだ。
全体が100だとしたら、私が知っている綾都は1にもまたないのかもしれないな。
少しチクリといたんだ胸を、ブラウスの上からぎゅっと握る。
「まあ、とにかく綾都さんは、同じ職場で働いていても出会うことはほぼ不可能の、トップシークレットなんですっ!」
僕は特別なんですけどね〜、と嬉しそうにニコニコ笑う伊吹くん。
トップシークレット……。
きっと、とてもすごい立場ってことたよね。
そんな人物___綾都が、どうして私の護衛なんかに自ら……。
そんなことを思った時、伊吹くんが「あ!」と言って、手を叩いた。
「帰ったら、いいもんがありますよ!」
「いいもの……?」
首を傾げると、伊吹くんは満面の笑みで大きく頷いた。
「綾都さんからですっ」