クズな君と恋したら
嫉妬
夜___。
「失礼しました」
お父様の書斎の扉を閉めて、自室に戻るなり、私はベッドに倒れ込む。
お父様には「自分の好きなようにしろ」なんて言われちゃったし。
……むしろ、お父さんに言われるがままにされた方が、私にとっては気楽だったのかもしれない。
私が望む人とは結婚できないのは、当たり前。
と言っても、私はまだ17歳だから、お父様はそこに配慮をしてくれたのだろう。
「はぁ……私、このまま婚約したらどうなっちゃうんだろう」
弱々しい私の声が、広い部屋にぽつりと響く。
きっと港くんと結婚すれば、すごく大事にしてもらえると思う。
だって、短い間に関わっただけでわかるくらい、港くんは眩しくてみんなの人気者。
クラスの中心にいる理由が、なんとなくわかった気がしたんだ。
そして、港くんと婚約すると、私のお父様にもデメリットなんてない。
港くんは、大手ホテル会社の御曹司だから。
私は、ベッドサイドに座らせてあるウサギのぬいぐるみを抱きしめて、顔を埋めた。
「いっそのこと、承認してもいいのかな」
___その時だった。
「あー、疲れた。それで?なに、婚約がどうたらこうたらって話、俺聞いてねーけど」
ドカン、と音がすると共に、部屋の扉を乱暴に蹴って入ってきた誰か……。
「え、……え!?あや、と……?」
反射的に振り向くと、そこには、いつもと変わらない笑顔を貼り付けた綾都が立っていた___。