クズな君と恋したら
「っていうか、熱、下がったの?」
このままじゃ話す内容がなくなって綾都が出て行っちゃう、そう思った私は、慌てて話題を探していた。
……しょうもない内容なのに。綾都ともっと一緒にいたくて……綾都ともっと話したくて。
そんな私は、きっと……ううん、絶対に綾都に惚れ込んでしまっている。
「え……あー……とっくに治ってるよ」
綾都は、私から気まずそうに目を逸らすと頬をぽりぽりとかいた。
……絶対嘘ついてる。
だって、冬休みに入ったからいいものの、綾都は私が家から出ない限りずっと自室にこもりっぱなしだったから。
何度も綾都の部屋に行こうって思ったけど……と、そこまで考えてから、顔に熱が集まるのを感じる。
___おれはなつめとキスしたい。
熱で潤んだ瞳を私に向けて、キスを求める綾都の姿が脳裏に浮かぶ。
……そんなことをいちいち思い出してしまって、綾都の部屋には入らなかった。
「熱、まだあるんでしょ」
「はー?」
チャリン、と綾都のピアスがなったかと思えば、すすす……と控えめに私と距離を取られる。
「わかるに決まってるじゃん。気づかれないとでも思ったの?」
「治ってるって言ったでしょうが」
困ったように笑う綾都は、やっぱりどこかしんどそう。
なんで隠すの……?
「関係ないでしょ」
「っ……」
綾都に近づこうと歩み寄れば、綾都は突き放すように冷たい声。
なんで……関係ないって、なに……?
「関係あるよ。私のボディガードでしょ」
「……だから休んでても仕方ないよ」
宥められるように言われて、言い返す言葉もなくなる。
子供の私に、大人を見せつけられているようで悔しい気持ちからなのか、服の裾をギュッと握ればじわりと目尻に浮かぶ涙。