佐伯達男のテレビのハナシ
心底から会いたい気持ちがなければ涙のご対面は実現しません。
『雨止んで、ひと傘忘れる…兎角《とかく》人間《ひと》は、時の流れに過ぎし日のことを忘れがちなものです…推理と思い出のご対面…それは秘密です!!』

1975年10月から1987年9月まで南海放送テレビで火曜日19時30分から放送していたヒューマンバラエティ番組『それは秘密です!!』のオープニングでMCの桂小金治さんが述べられていた言葉である。

話は、『それは秘密です!!』の番組の最後のコーナー・涙のご対面のお話しである。

第二次大戦中や戦後の混乱期に血を分けた親きょうだいと離れ離れになった…

赤ちゃんの時に養子に出された…

実の親に会いたい…

他にも、複雑な事情があって親きょうだいと離れ離れになった…

………

さまざまな事情で大切な家族と離れ離れになった。

『とにかく、生きている間に生き別れた親きょうだいに会いたい…』

…と心底から願っている視聴者のお気持ちに答えるコーナーである。

それではここで、涙のご対面に至るまでの流れを説明します。

まず、視聴者のみなさまが番組あてにハガキを出して申し込みをする…

次に、番組のスタッフさんが秘密さん(申し込んだ人)に電話連絡をして日時を指定する…

秘密さん(申し込んだ人)は指定された日時に番組スタッフさんのもとへ行く…

そこで、今の気持ちを伝えた上で親きょうだいと離れ離れになったいきさつを話す…

番組スタッフさんは、委託先(大手興信所会社)に秘密さんの親きょうだいの居場所探しを依頼する…

居場所が判明したのち、委託先の人が秘密さんの親きょうだいさまに伝える…

そのうえで、秘密さんとご対面をするかどうかを決める…

秘密さんと親きょうだいさま双方がご対面を望んでいる場合に限って、ご出演する…

と言うはこびである。

…でなければ、泣きの小金治を見ることはできなかった。

ご対面の時に流れる音楽…

おかあさまの時は『かあさんの歌』…

その他の場合は、山田耕作作曲の『赤とんぼ』…

…である。

その中で、秘密さんと親きょうだいさまとの涙のご対面…である。

秘密さんと親きょうだいさまは、声をあげて泣いた。

同時に、女性回答者たちと小金治さんと女性アシスタントさんがともに泣いた。

ぼくも、この場面をじっと見ていたからつらさ悲しさはよく分かる…

その日の夜は、ふとんの中でむせび泣いた。
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