愛し、愛され、放さない
プロローグ・出逢い
二年前の春。

僕は玲蘭に出逢い、一目惚れをした。

玲蘭の大学卒業式。
僕はたまたま近くにいて、何気なく見た大学から帰ろうとしていた女性。

それが、玲蘭だった――――――

他の卒業生が袴を着ていた中。
玲蘭は、スーツ姿だった。

袴の大学生の中に一人だけスーツだったからか、玲蘭が可愛らしい容姿をしているからか……

どうしてかわからないが、僕の目に玲蘭だけが綺麗に映っていた。


それからわずか一週間後。
意外な形で僕は玲蘭と再会する。

「百合?」

僕が一人でランチをしていると、幼馴染みの・克広(かつひろ)が女性を連れて声をかけてきた。

「克広か。
お疲れ様!
……………え…この…娘…」

克広と手を繋いでいた女性こそ、僕の心を鷲掴みした女性・玲蘭だったのだ。

「あ、俺の彼女だよ!
宮瀬(みやせ) 玲蘭!」

「………」
(彼女……!?)

「こんにちは!」
「可愛いでしょ?俺の彼女!」

柔らかく笑う玲蘭。
更に僕の心が、攫われる。

「………」
(嘘だろ?)

「百合?どうしたの?」

「………」
(なんで!?よりによって克広のモノなんだ!?)
僕は、信じられない思いで固まっていた。

「百合!!」

「…っえ!?な、何?」 

「いやいや…俺のセリフだよ。
どうしたの?
あ、もしかして!玲蘭に、一目惚れでもした?(笑)」

「……/////」

「………なーんてね!(笑)
あげないよ?」

しかし僕は、諦められなかった。

何をしていても玲蘭の顔が浮かぶ。
玲蘭のことばかり考え、仕事も手につかない。

どうしていいかわからない。

とにかく理由をつけて、二人のデートに入り込み、玲蘭との時間を過ごす日々。

控えめで心優しい玲蘭に、益々惚れていく。

そして僕は、克広を出し抜いて玲蘭に会いに行く様になる。

平気で嘘をつき、克広の悪いところを吹き込んでいく。

克広は浮気症で、高校の頃から女を取っ替え引っ替えしていただの、セフレが何人もいるだの、今も玲蘭の他に女がいるだの……

最初は、全く信用していなかった玲蘭。
『克広くんはそんなことしません』と。

だから僕は、信憑性を持たせるため金で雇った女を克広に近づかせ、それっぽい写真を撮り玲蘭に見せた。
少しずつ玲蘭は、克広を信じられなくなっていく。
 
ちなみにこれは“克広ではなく、百合”のことだ。
高校の頃は、セフレが何人もいて、女も取っ替え引っ替えしていた。
(もちろん今は、玲蘭だけを愛している)

純粋な玲蘭を騙し、心の隙間に入り込んだのだ。

全ては、玲蘭を手に入れるため。


そして――――出逢いから、二年弱。

僕は、克広から玲蘭を奪い取ることに成功したんだ。

克広とはそれから関係が悪くなったが、そんなことどうでもいい。


もう僕は………

“玲蘭がいれば、何もいらない”



すぐに籍を入れ、結婚した百合と玲蘭。

嘘をつき手に入れた玲蘭を手放さないようにするためか、百合の愛情表現は“かなり異常”だ。



そんな二人の、結婚生活。

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