愛し、愛され、放さない
「玲蘭、何食べたい?」

レストラン街に向かい、大きな案内板を見る。

「百合くんが決めて?」

「んー、そうだね…
ピザは?
一緒に食べよ?」
微笑み頷くと、百合も微笑み二人は向かった。

満席なため、順番表に名前を書く。
「玲蘭、端の方に行ってよう?」

玲蘭と端に行き、壁に玲蘭を閉じ込めるようにして立つ百合。
「百合くん?」

「ん?何?」

「な、なんか…あ、圧迫感が……」

「だって、玲蘭を見せたくないし」

「………」
(そんな、真顔で…)

百合は、玲蘭だけをジッと見つめていた。
まるでそこには、玲蘭しか存在してないかのように。


(うぅ…恥ずかしいよぉ…//////)
「あ…/////
ランチしたら、今度は百合くんの服…見な…い?」
恥ずかしそうに顔を赤らめながら、窺うように見上げる。

「ん……」

やだな…と思う。
店員は男性だろうし、ただでさえ玲蘭を見られないようにしてるのに…… 

「私…も…百合くんに、選んであげたいなぁ…なんて……」
キュッと服を小さく握り、見上げる玲蘭。

「……/////」

可愛い―――――

(これ、わざと?)

「…………わかった。いいよ」
微笑み頭をポンポンと撫でると、玲蘭も嬉しそうに微笑んだ。


「――――二名でお待ちの黒沢様〜」
漸く呼ばれ、二人は手を繫ぎ席に向かった。

先に玲蘭を座らせる。
そして百合も、向かいに腰掛けた。

メニュー表を百合に見えるように置いた、玲蘭。
「何がいいかな?」 

「玲蘭が選びな?」
百合は、そのメニュー表を逆にして玲蘭を見せた。

「じゃあ…
マルゲリータと…シーフードも食べたいな…」
やっぱり、窺うように見上げてくる玲蘭。

百合は、フフ…と笑って「いいよ」と言った。

やっぱり嬉しそうに笑う玲蘭を見ながら、百合は頬杖をつく。

玲蘭が窺うように見上げてくる姿に、実はいつも煽られている百合。
その上目遣いが可愛くて、愛しくて、いつもドキドキしている。

平静を装って微笑んでいるが、かなり動揺しているのだ。

だから基本的には、受け入れてしまう。

百合は少しでも玲蘭に触れたくて、向かいから手を伸ばし、玲蘭の手を握った。
そして、指を絡めた。

「……/////」
あっという間に、玲蘭の顔が真っ赤に染まる。

可愛い………
可愛すぎだ………!


そこに、注文をとるために店員が席に来た。
「お決まりですか?」

「はい。
……………あ…」
(男の人……)

恐る恐る百合を見ると………

「………」

雰囲気が、黒く落ちていた。
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