愛し、愛され、放さない
苦しい三角関係
そして数日後の夕方。

百合の働く会社前。
克広がいた。


ぞろぞろと退社していく社員達の中から、百合が出てきた。

「百合」

「克広」

「ちょっと、いいかな?」

「良くない」

「玲蘭のこと。
どうしても、話したいことがある。
今日がダメなら、明日も来る。
明日がダメなら、明後日。
さすがに、今回のことは許せないから」

克広らしからぬ、鋭い視線と黒い雰囲気。

「………」
百合はため息をつき、克広と人気のない所に向かった。


「―――――百合、俺は誰よりも百合のことをわかってるつもりだよ。
嘘をつくことでしか、生きていけなかったことも知ってる。
でも、さすがに最低だよ、百合」

「何のこと?」

「しらばくれないでよ!!
玲蘭に、あんな辛い嘘を吹き込むなんて……!」

「………」

「玲蘭は、俺の全てだったんだ……!
大切だった。
それこそ、結婚してずっと一緒にいたいって思うくらいに。
…………なのに…傷つけて、俺から無理矢理奪った!!」
克広の目は潤んでいて、苦しそうに歪んでいた。

「てか、それ、どこで知ったの?
どうしてこの街にいるの?
なんで、マンション前にいたの?」

「出張でこっちに来てて。
可愛がってもらってた、転勤した元先輩があの辺に引っ越したのを聞いてたから、会いに行った帰りだったんだ。
玲蘭のことは、愛実ちゃんに聞いたんだよ。
あの日、玲蘭の様子がおかしかったから」

「そうゆうことか…」

「びっくりしたよ。
愛実ちゃんに会いに行ったら、逆に責められたんだから。
“どうして、玲蘭を裏切るようなことをしたんですか!?”ってね。
俺としては意味がわからなくて。
よくよく聞いたら、とんでもないことを吹き込まれてた。
すぐに百合の仕業だってわかったよ。
――――――百合、君は最低だ……!!」

「最低?
…………フッ…そんなことわかってるよ。
僕は自分が最高だなんて思ってない。
僕はただ、玲蘭が欲しかっただけ。
玲蘭を独り占めしたかっただけ。
玲蘭が傍にいてくれるなら、僕は最低で構わない。
何もいらない」

「………」

「………」

  



「………ねぇ…百合。
―――――――返してよ、玲蘭を……」

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