愛し、愛され、放さない
「だ、ダメだよ…!!
ほ、ほら、まだ、朝ご飯も食べてないし、何も終わってない……」

「………フフ…そうだね。
キスは、全部準備が済んでからの約束だったね!」

軽く押し返し恐る恐る言う玲蘭に、百合は微笑んでゆっくり離れた。

「あ、ねぇ!保湿クリーム、僕が塗っていい?」
「え?あ、う、うん/////」

優しく、百合の手が頬に触れる。
気持ち良くて、玲蘭はゆっくり目を瞑った。

身長差がある二人。
顔上げて目を瞑っている玲蘭。
キス待ちしているかのような状態に、百合は煽られてしまう。

無意識に、口唇を重ねてしまう。

「んんっ…!?」

そして、そのまま貪る百合。
「んんっ…百合…く、だめ…」

「だめ…口…離さない、で…」
もがく玲蘭の頬をガッチリ包み込み、尚も貪る。

しばらく貪り、漸く離した百合。
額をくっつけて、玲蘭の口唇をなぞり言った。
「ごめんね…我慢できなかった……」
「ううん…」

いつも相手の顔色を窺ってばかりで、自分の意見をあまり通せない玲蘭。
特に百合には、口答え出来ない。

依存気味なのもあり、百合の言う事は何でも受け入れるのだ。

「さぁ、朝ご飯作ろ?」
そう言って手を差し出した百合。
玲蘭は頷き、その大きな手を握った。

“手を繋いで”キッチンまで移動する。
一緒に調理を開始した。

テキパキと要領良く調理する百合の横で、一生懸命調理をしている玲蘭。

「玲蘭、無理はしなくていいよ?
隣で見てるだけでも構わないからね!
急いでして、怪我でもしたら大変だし…」

「あ…う、うん…
じゃあ…せめて、サラダだけでも……」

窺うように言うと「うん!お願い!」と百合が微笑んだ。

結局、百合がほとんど作ってしまい、玲蘭は野菜サラダだけになる。
それでも百合は微笑み「お疲れ様!」と玲蘭を労う。

益々玲蘭は、何もできなくなるのだ。

キッチンカウンターに料理を並べて、並んで座る。
手を合わせ、食べ始めた。

「ん!美味しい!
やっぱ、百合くんは完璧だね!」
「フフ…良かった!
―――――ん!このサラダ、美味しいね!
こんなドレッシング、買ってたかな?」

玲蘭が唯一作ったサラダを食べ、顔をほころばせる百合。
玲蘭は心の中でガッツポーズをする。

「玲蘭?
このドレッシング、何処でいつ買ったの?」 

「えーと…」

「僕に隠し事しないで、教えて?」

百合が鋭く見つめ、玲蘭の頬に触れた。
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