愛し、愛され、放さない
ソファに座った、三人。
玲蘭は、向かいに座った百合を見ていた。

「百合くん。
“本当のことが”知りたい」

普段の玲蘭とは思えない程、真っ直ぐ見つめている。

「全部、嘘だよ」

もう、嘘はつけない。
百合も意を決して、玲蘭を見据えた。

「そう……
でも、どうして?」 

「玲蘭が欲しかったからだよ」

「それにしても、あんな嘘……」

「そうでもしないと、玲蘭は克広から離れられなかったよね?」

「え?」

「玲蘭、克広のこと“どんな目で”見てたかわかる?」

「え?」

「キラキラしてた。
僕、初めてだった。
あんな綺麗な視線を見たの。
きっと…本当に大好きだったんだろ?」

「うん」

「そんな玲蘭を手に入れるには“克広が最低にならないと”だろ?
僕が“普通に”口説いても“100%手に入らない”
だからだよ」

「それは……」


「…………玲蘭」
そんな玲蘭に声をかける、克広。

「克広くん…」

「“もう一度”考え直してくれないかな?」

「え?」

「俺はまだ、玲蘭が好きなんだ!
戻って来てほしい!
俺の所に………!!」

「え……」

「俺の傍にいて?
もう…傷つけないから!」

「克広くん…」

「――――――玲蘭!行かないでよ!!
僕の傍にいてくれるんだろ!?
僕との結婚生活、幸せだって言ってくれただろ?」
百合が訴えるようにぶつける。

「百合…く……」


「ね?玲蘭。
玲蘭は、僕から“放れられない”」


「あ…あ…」

「ちょっ……百合!!やめろよ!!」

頭を抱えてしまう玲蘭に近づき、克広が庇うように百合を睨みつけた。

「うるさい!!!
玲蘭に、気安く触るな!!」

玲蘭の隣に座った百合が、抱き寄せ克広を鋭く見る。


「………………めん、なさ…」

「玲蘭?」
「玲蘭!」

「ごめんなさい…克広くん…」

「え?」

「あの時、克広くんのことを信じてあげられなくて……ごめんなさい…」

「玲…蘭……」

「私、本当に大好きだった。
克広くんのこと。
百合くんから克広くんのことを言われた時“そんなわけない”って思ってた。
あんな優しくて、誠実な克広くんが“そんなことするわけない”って。
でも……写真見せられたり、毎日のように百合くんから話を聞いてると、段々…克広くんが見えなくなって、信じられなくなったの」

切なく揺れる玲蘭の瞳。
克広は、ゆっくり首を横に振った。

「ううん!いいんだよ?
玲蘭のせいじゃない……!」
< 31 / 34 >

この作品をシェア

pagetop