愛し、愛され、放さない
「百合くん」

「何?」

「一度、考えさせてくれない?」

「え……」

「百合くん、克広くん。
“一人で”考えたい……!」

「は?」
「玲蘭…」

「冗談はやめろよ!!
僕から離れるなんて許さない!!!」

「ひゃっ!!百合く……!い、痛い……!!」
玲蘭の肩を持ち、言葉をぶつける百合。
肩を持つ力に、力が入る。

「ちょっと、百合!!
やめなよ!!
玲蘭を離せよ!!」
慌てて克広が、百合を止めに入る。

「うるさい!!
ねぇ、玲蘭!
お願い!僕から放れないで!?
ねぇ!ねぇ!!」
克広を跳ねのけ、尚も玲蘭を責め立てる。

「百合くん…!!」 
「百合!!」
 

「……………玲蘭は……僕に“死ね”って言ってるの?」
玲蘭と克広の鋭い声に、フッと項垂れて切なく呟いた百合。

「え……」
「百合?」
玲蘭と克広が固まったように百合を見る。

「玲蘭が傍にいないなら、僕に生きる意味がない。
…………いいよ、死んであげる。
元々は僕が嘘をついたからだしね。
ごめんね……
克広のところに行きなよ。
大丈夫。
きっと、幸せにしてくれるよ……!」

「百合く――――――」
玲蘭の頬を包み込み、チュッとキスをした百合。

ゆっくり立ち上がった。
そして、ベランダに向かっていく。

「百合くん!!」
「百合!!」

一度振り返った百合。

「克広、ごめんね。
濡れ衣きせて。
玲蘭、大好きだよ!
幸せになってね!」

そう言って、ベランダの柵に手をかけた。

「百合!!やめろ!!」

克広が呼びかける中、玲蘭が駆け出した。

「百合くん!!」
そして百合に後ろから抱きついた。

「玲蘭、危ないから離れて?」

「傍にいるから!!!」

「え?」

「傍にいる!!
百合くんから、放れない!!」

「ほ、ほんとに……?」

「うん、お願いだから、死なないで!!」

「僕を…許してくれるの?」

「うん。だから――――ね?」

「うん…!ありがとう!玲蘭!」
そう言って、抱き締めた。
そして「玲蘭、ありがとう!好き、好き、大好き」と言いながら、頬を擦り寄せた。

百合に「ちょっと待って」と言った、玲蘭。
ゆっくり百合から離れ、克広に向き直った。

「克広くん、ごめんなさい…
私は、百合くんの傍にいます………!」


克広はただ…「わかった…」と言って、マンションを出ていったのだった。
< 32 / 34 >

この作品をシェア

pagetop