愛し、愛され、放さない
「あ…隠し事してるわけじゃ…」
少し怯えたように言う、玲蘭。

「じゃあ、教えて?
玲蘭のことで知らないことがあるのは、耐えられない。
何でも知っておきたいんだ」
頬を触る百合の手に、心なしか力が入る。

「て、手作り……」

「え?」

「手作り…なの…」

「え?玲蘭が?」

「う、うん。
お料理の練習を最近してて…
それで……」
少し震えながら、恐る恐る言う玲蘭。

「なん…だ……
そ…だったんだね…!
ごめんね、疑うような言い方して……」
ホッとしたように息を吐く、百合。

「う、ううん…」
ゆっくり首を横に振ると、百合が横から優しく抱き締めてきた。

「ごめんね…ごめん……
怖かったよね?僕…
ごめんね」
ゆっくり背中をさする百合に、玲蘭は「大丈夫」と微笑んだのだった。


朝食が済み、一緒に片付ける。
「玲蘭。
コーヒーと紅茶、どっちにする?」

百合が洗った食器を拭いて棚にしまっていた玲蘭に、声をかける。

「あ…紅茶、飲みたいな?」
「ん!了解!」

「あ、でも、百合くんがコーヒーがいいなら……」
「ううん!僕はどっちでもいいよ!
玲蘭が飲みたい方で構わないよ」

微笑み言う百合に、ホッと肩を撫で下ろし微笑んだ。

紅茶を淹れる百合を隣で見つめる。
「あ、百合くん」
「ん?」

「おトイレ、行きたいな…」
やっぱり窺うように言う玲蘭に、百合は「ん!」と返事をして、手を差し出した。

手を繋いで“二人一緒に”トイレに向かう。


そう―――――――

百合と玲蘭は“何処に行くにも”常に二人一緒だ。
それが家の中であっても。

さほどないトイレまでの距離でさえ“手を繋いで”行く。
(百合のその日の気分で、玲蘭を抱きかかえて移動する時もある)

別々に行動することは決してなく、意識さえもいつも一緒。
(例えば―――同じリビングにいて、一人がテレビを見て、一人はスマホを操作する……というようなことは決してない)

“何でも”一緒なのだ。


トイレに着くと、百合が「はい、行ってらっしゃい」と言った。
玲蘭は頷き、トイレに入る。
その間百合は、トイレのドア前で待つのだ。

二人が離れる時は、トイレ内、百合の仕事中、郵便等宅配や訪問者の対応(基本的に百合で、百合の仕事中のみ玲蘭)、(玲蘭の生理中の)入浴のみだ。


それ以外は、何処に行くにも、何をするにも、常に一緒。



二人は、決して“離れない”
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