愛し、愛され、放さない
「…………え?百合くん?」

「あ…キス、したいなって思ったんだけど、ほら僕、煙草吸ったばかりでしょ?
さすがに嫌かなって」

「あ…
……///////」

玲蘭の頭をポンポンと撫でて、煙草を咥える百合。
玲蘭は百合の横顔を見て、そっと顔を近づけた。

そして百合の頬に、チュッとキスをした。

「え……!!?
…………っ…//////」

思いがけない行為に、百合は驚き顔を赤くしてバッと玲蘭に向き直った。

「……/////」

「玲蘭…!!//////」

まさか、玲蘭からキスされるとは思わない百合。
思わず、強い口調で名前を呼んだ。

「あ…あ…ご、ごめんね!!
ほ、頬なら良いかなって……」

怒らせた……!?

慌てて謝罪する、玲蘭。

「あ…ち、違うよ?
ごめんね!怒ったんじゃないんだ!
びっくりして……
まさか玲蘭がキスしてくれるって思わないから…」
百合も慌てて弁解した。

百合は冷酷な人間で、基本的にはクール。
声を荒らげることはないが、相手の心を突き刺すような言い方をする。
臆病な玲蘭からすれば、その声色や口調だけで益々恐ろしさを助長させるのだ。

玲蘭を抱き締め、ゆっくり背中をさする百合。
玲蘭が落ち着きを取り戻すと「もうそろそろ仕事に行く準備しないと」と言った。

手を繋ぎ、寝室に向かう。
クローゼットの前で、百合がスーツに着替える。
その間玲蘭は、着替えを手伝う。
「今日は、どのネクタイがいいかな?」
「うーん…
これ…は?」

「うん!そうする!
―――――はい、結んで?」
「うん」

ベッドに腰掛けた百合が、両手を広げて微笑んだ。
頷き足の間に立った玲蘭が、百合のネクタイを結ぶ。

百合はジッと玲蘭を見つめていた。
「………」
(綺麗だ…)

特別美人というわけではない。
でも、華奢な身体と柔らかな雰囲気、甘さを含んだような笑顔。

玲蘭の全てが可愛くて、美しくて、愛おしい。

克広が言っていた。

『玲蘭って、モテるんだよなぁ〜
だから安易に男に会わせたくない。
でも矛盾してて、見せびらかして“俺の女”って自慢したい』と―――――――

つい、見惚れていると……
「――――りくん!
百合くん!」

「…っあ?!」

「出来たよ?」
玲蘭が目をパチパチさせて、見下ろしていた。

「……/////」
(あぁ…ほんと、愛おしい……!)

百合は、玲蘭への狂おしい想いを落ち着かせるように玲蘭の口唇に食らいつき、味わうように貪った。
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