愛し、愛され、放さない
「―――――怒らせた……よ…ね…?」

どうしよう……
どうしよう……
どうしよう……

【本当にごめんなさい】
百合にメッセージを送る。

〚もういいよ〛

「………」


“もういいよ”


これには、どんな感情がこもってるのだろう。

許してくれた?
それとも、呆れてる?

メッセージって、本当に厄介だ。

その文字に、どんな感情がこもっているかわからないから。

「なんか、お詫びに買ってこようかな?」

最近百合は、コンビニに売ってるシュークリームがお気に入りだ。

「よし!」

買いに行こうと財布を握りしめ、玄関に駆けていく。

しかし、玄関のドアを開けようとしてピタリと止まる玲蘭。

「………」
(ちょっと待って…)

「ここで出ていくと、更に怒らせるんじゃ……」

コンビニは歩いて五分程の距離。
でもたった五分でも“外に出ること自体”怒らせるのではないか。

「ど、どうしよう……」
その場にうずくまる。

例え……詫びのためでも、外に出たことがわかれば怒らせるのでは?

そう思い直した玲蘭。
中に戻ったのだった。

そして、夕食作りに力を入れることにしたのだ。


いつもは二品しか作れないが、今日は頑張って三品作り、百合の帰りを待つ。

しばらくすると、ガチャガチャ…と玄関のドアが開く音がしだす。
ソファに座っていた玲蘭が、パッと顔を上げた。
そして、玄関に駆けていく。

「―――――ただいま!玲……」
「ごめんなさい!!」
百合の言葉に被せるように謝罪する。

「え?玲蘭?」
「怒って…る、よ…ね?」

「………」
「ごめんなさい!」

「玲蘭」
「は、はい!」

「ん!抱き締めさせて?」
両手を広げ、微笑んでいる百合。
玲蘭は吸い寄せられるように、百合に抱きついた。

「大丈夫。怒ってないよ。
…………ほんとだよ。
ただ、心配だっただけ」
背中を撫でながら、安心させるように言う。

「うん」 
玲蘭は、ホッと肩を撫で下ろした。

「………ナンパとかされなかった?」

「うん。
洗剤だけ買ってすぐに帰ったから。
あんま、ウロウロしない方がいいかなって」

「ん、良かった」

「あ!」
百合の胸に顔を埋めてた玲蘭が、バッと顔を上げた。

「ん?」
微笑み、頬を撫でる。

「帰り道に、メンズの新しいお店がオープンしてるの見たよ!
百合くん、新しいズボン欲しいって言ってたでしょ?
今度の百合くんのお休みに、一緒に、見に、行…かない…?」

窺うように顔を覗き込む玲蘭に、百合は微笑み「いいよ」と頷いた。
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