愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
専用のエレベーターでしかいけないし、そのエレベーターもパスカードを持っている人間しか乗れない。
宣利さんのように選ばれた人間しか入れないようになっていた。
おかげで落ち着いていて、私は好きだったりする。

「僕はお義父さんの会社を推薦しようと思っているが、どうだろう?」

「……は?」

口に運びかけたフォークが止まる。
宣利さんと一瞬見つめあい、一回大きく瞬きをしたあと、中途半端に上がっていたフォークを皿に戻した。

「うちを、ですか?」

「そうだ」

宣利さんは頷いたが、なにを言っているのかわからない。
父の会社が経営しているのは低価格帯の定食屋と中価格帯のファミレスだ。
こんな、VIPが集う場所になんて出店できるはずがない。

「うちはこんなところにはまったくあわないですが」

もし、もしも。
VIPに遊び心でB級グルメを提供したい、とかだったらあるかもしれない。
いやでも、そんなコンセプトは普通、ないだろう。

「でも経営してるだろ、三つ星レストラン」

「あー……」

しれっと言われ、思わず天井へ視線を送っていた。
< 104 / 194 >

この作品をシェア

pagetop