愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
「お義父さんの、会社の理念から外れるのはわかっている。
でも、なにをやるにしてもまず金がいる。
これで宣伝になりファミレスの売り上げも上がるかもしれないし、それに理念に賛同し、慈善活動に出資してくれるスポンサーも見つかるかもしれない。
どうだ?」

彼の言うことはもっともだ。
経営者の視点から見れば、これが正しいし納得もできる。
しかし、彼の口利きでの出店なんて、えこひいきみたいでいい気はしない。

「もっとも、僕が推薦したからといって即決ではないし、審査を受けて通らなければ決まらないけどね」

芝居がかった仕草で、宣利さんが肩を竦めてみせる。
機会は作る、ただし実力次第というわけか。
だったら。

「お心遣い、ありがとうございます。
私では返事ができませんので、父に相談してみてください」

精一杯の気持ちで頭を下げた。

「うん、わかった」

宣利さんが頷く。
父の会社のことまで考えてくれるなんて、本当にいい人だ。
こんな素敵な人と復縁できてよかったな。
たとえ、子供以外に理由がなくても。

メインの仔羊のローストは表面はパリッと中はジューシーで、臭みもほとんどなく美味しい。

「花琳は本当に美味しそうに食べるよね」

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