愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
くすくすと小さく笑われ、頬が熱を持っていく。

「食べ意地が張っていてすみません……」

ナイフとフォークを置き、椅子の上で小さくなる。
つわりといえば吐き気が定番なのでそうなったらどうしようと戦々恐々としていたが、幸いなのか吐き気はほとんどない。
ひたすら眠いのもあれだが、一日中寝ていても誰もなにも言わない環境なのであまり困らなかった。

「いや。
花琳が美味しそうに食べているのを見ていると、僕も食欲が湧いてくるというか」

フォークに刺した肉を、宣利さんが口に入れる。

「前も言ったが、僕は食事なんて栄養さえ摂れればいいと思っていた。
でも、花琳を見ていたら食事とは楽しくするものなんだなって、やっとわかったというか」

「はぁ……?」

ちょっと、しみじみと彼がなにを言っているのかわからない。
こんな言葉が出てくるなんていったい、今までどんな生活をしてきたんだ?

「僕は曾祖父と祖父から、なんでもトップじゃなきゃ意味がないという教育を受けてきてね」

それはちょっとわかるかも。
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