愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
世界でも有数の会社になったというのに、所詮成り上がり者に過ぎないと卑屈になり、上流階級の血を入れねばと私との結婚を押してきた曾祖父。
いまだに男系跡取りに拘る祖父。
そんなふたりなら、そういう考えを持っていてもおかしくない。

「遊ぶ時間どころか寝食も削って勉強したよ。
それでできあがったのは〝ロボット〟だったわけ」

自嘲するように彼が笑う。
それで周囲からなんと言われているのか彼自身知っているし、コンプレックスなのだと気づいた。

「でも、宣利さんはよく、気遣ってくれて優しいです」

「それはここ最近の僕、だろ?」

また彼が自嘲するので、首を振って否定する。

「離婚する前だって、私を気遣ってくれてました。
後悔もした結婚でしたがそれが嬉しくて、案外悪くないと思えました」

だから宣利さんに惹かれた。
だから離婚がつらかった。
でも、その気持ちは知られたくない。

「……そうか」

小さく呟いた彼は、嬉しそうに見えた。

「宣利さんはロボットなんかじゃありません。
なにより、ちゃんと食事をするようになりましたから!」

変な空気になりそうなのを茶化して回避を試みる。

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