愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
「じゃあ、楽しまないとですね!」

腕を絡ませ、積極的に彼を引っ張って歩き出す。
屋台の定番、たこ焼きとか焼きそばとか食べさせたいけれど、お昼ごはんを済ませて出てきたのが悔やまれる。

「そうだ。
ヨーヨー釣りでもやってみますか」

「いいな」

見えてきた、ヨーヨー釣りの屋台を指す。
金魚はあとのお世話がいるが、ヨーヨーはしばらく楽しめば処分できるからいいだろう。

ふたりでたくさんのヨーヨーが浮かぶプールの前にしゃがむ。

「おじさん、ふたり分」

「えっ、僕が払うよ!」

「いいから」

お金は押し切って私が払った。
宣利さんは下手するとこんなところなのに、一万円札が出てきかねない。

「どっちが先に釣れるか、競争ですよ」

「いいね。
なにを賭ける?」

意外と、宣利さんが乗ってくる。

「そうですね……」

「僕は、花琳からキスしてほしい」

「え?」

思わず、彼の顔を見ていた。
冗談だと思いたいが、彼は笑うばかりで判断がつかない。

「じゃあ、勝負だ!」

「えっ、あっ!」

まだいいともなんともいっていないのに、彼がヨーヨーに向かってこよりについた釣り針を下げていく。
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