愛のない政略結婚で離婚したはずですが、子供ができた途端溺愛モードで元旦那が迫ってくるんですがなんででしょう?
「でもそれって全部、勘違いだったんですね……」

出発は確かに、仕方のない結婚だったのかもしれない。
でも、宣利さんも私と同じように私に惹かれ、想ってくれていた。

「私たちずっと、すれ違っていたんですね」

顔を上げた瞬間、唇が重なった。

「花琳。
愛してる」

溢れる気持ちを伝えるように何度も何度も、角度を変えて唇を啄まれる。
そのうち耐えきれなくなったのか、ぬるりと宣利さんが侵入してきた。
吐息とともに彼の気持ちが私の身体を満たしていく。

……幸せ。
すごく幸せ。
こんなに幸せでいいのかな――。

「……はぁーっ」

唇が離れ、落ちていった吐息はどこまでも甘い。
艶やかに光る瞳をレンズ越しに、熱に浮かされてみていた。

「続きは当分、おあずけな」

ちゅっと耳もとに口付けを落とされ、ぼっと顔から火を噴いた。

「そういえば指環、どうした?」

花束を近くのテーブルの上に置き、先ほどと同じように宣利さんがソファーに寄りかかる。
その手がなにも嵌まっていない、左手薬指を撫でた。

「あー……」

前の指環は処分せずに持っている。
処分するタイミングを失ったというか。
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